音楽: 2008年6月アーカイブ

 シカゴのオリジナルメンバーの一人であるロバート・ラムが、ボサノヴァに挑戦したという異色作です。ボサノヴァのスタンダード曲のカバーと自作オリジナルを織り交ぜた構成となっています。アメリカでは5月20日に発売されていましたが、日本で入手可能となったのは6月に入ってからのようです。私の場合はAmazonで予約したのですが、ようやく届いたのが本日で、この時期になって流通量が安定したのかなという印象を抱きます。なお、以前の「Subtlety & Passion」や「Leap of Faith」と同様にメジャーレーベルからの発売ではないため、日本盤のリリース予定は無く、アメリカ国内でも通信販売主体で店頭売りはあまりないものと思われます。

 肝心の内容についてですが、1曲目の「A MAN AND A WOMAN」のようにほとんどの人が一度は耳にしたことがあるであろうという曲を混ぜてくれていることで、私のように普段ボサノヴァと縁がないリスナーであっても割合あっさりと親しむことが出来る作品に仕上がっています。

 驚いたのが、全体を通じて本当にボサノヴァのアルバムとして仕上がっているということ。シカゴやほかのソロ作品とは明らかに違い、彼の甘めのヴォーカル以外に普段の彼の作品に通じるキャラクタを見いだすのが難しいほどです。今にして思えばソロ作品「Subtlety & Passion」や「Life Is Good In My Neighbourhood」でその要素を感じさせる曲が一部にあったかな、という程度です。

 なお、収録曲は9曲+リミックス版3曲という構成で、収録時間も40分少々ですからボリューム感が少々物足りない反面、音作りの傾向と相まって非常にあっさりと心地よく聴ける作品といえます。

 制作から15年近く経過しましたが、遂に正式な形でのリリースとなりました。米国盤は6月17日発売済で、日本でも輸入CDを取り扱っている店であれば店頭に並んでいるようです。昨日台場のHMVの店頭に並んでいるのを確認しています。日本盤の発売は7月23日予定で、「XXX」の時と同様に約1ヶ月のタイムラグがありますので、取りあえずAmazonで米国盤を予約しておきまして、昨日到着しました。制作当時は22作目となる予定でしたが、今回のリリースでは32作品目として数えられています。

 これまでも海外でダウンロード提供されていた音源などで大体は聴いていた作品ですが、正式なアルバムとしてリリースされたというだけで感無量です。強いていえば、最大の問題作といえた楽曲である「Get On This」がカットされてしまったのだけは残念ですが…。

 日本ではベスト盤への収録などの形で既に5曲がリリース済みだったのですが、それと比べると若干ですがおとなしい音にまとめてある印象を受けます。メンバー自身の「やけに荒すぎた」という感想を反映している結果なのかもしれませんが、「Sleeping in the Middle of the Bed」などはむしろもっと派手な音でも良かった気もします。

 この作品がもし1994年に予定通り発売されていたらどうなっていたかと考えてみると、メンバーたちの気合いとは裏腹に案外売れなかったのかもしれないという気がします。当時のアメリカのヒットチャートがこの作品を受け入れるだけの許容量を持っていなかったと思いますので。この時期はごく一部を除き、ベテランの実力派アーティストたちも思うように作品が評価されずに苦しんでいた時期ですからね。

 今発売されたことで、決して大ヒットすることはないと思うのですが、当時よりは作品として正当な評価を受けられる可能性はあるように思います。私個人の感想は以前と変わらず「90年代シカゴの最高傑作」であり、「XXX」を発表した2000年代のシカゴとはやはり毛色が違います。どちらが良い悪いという問題ではなく、違うモノであると考えていただければと。

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