音楽: 2009年8月アーカイブ
私にしては珍しく、Amazonからの宣伝メールに乗せられてCDを買ってしまいました。もっとも、実際に購入したのはお茶の水のディスクユニオンでしたが...。
察しの良い方はタイトルで気付くかもしれませんが、昨年活動停止を発表したTOTOの作品をカバーしたアルバムです。内容についてはAmazonの商品ページにリンクを貼っておきますのでそちらをご覧ください。そちらで試聴も可能です。
これはオリジナルを知っていないと全く楽しめない作品だと思うのですが、オリジナルを知っていれば感心する部分もあれば思わずクスリと笑ってしまうような微笑ましさを感じる部分もあり、なかなか聴き所のある作品です。
作品全体を通じてTOTOのオリジナルに心酔していることを感じさせる要素が見られるのは好印象ですが、TOTOの音はやはりTOTO以外が再現し得ないことをはっきりと認識させてくれる作品でもあります。
特にそれが顕著なのはヴォーカルとドラムです。ジョセフ・ウイリアムスやスティーブ・ルカサー辺りの声は真似をしても上手いカラオケというレベルになってしまいますし、故ジェフ・ポーカロのドラムが冴え渡っていた「Home of the Brave」辺りは、どんなに頑張って演奏してもオリジナルの魅力の半分も出せていません。それどころか旧来のファンからさほど評価されていなかったサイモン・フィリップスがオリジナルを演奏している「I Will Remember」でもドラムの演奏は明らかに見劣りしてしまいます。
この作品は決してオリジナルに匹敵する演奏を楽しむという性質のカバーではありません。むしろ聴きながらオリジナルの素晴らしさに思いを馳せる一枚でしょう。
これといって決定的な理由が見つからないので真相はわからないのですが、1982年以来シカゴの中心的メンバーとして活躍してきたビル・チャンプリンが脱退したというニュースが飛び込んできました。CNNなどが伝えていますので、こちらに記事を貼っておきます。
本人が自身の公式サイトで表明しているコメントによると、久々のソロアルバム「No Place Left To Fall」(日本では昨年発売済)のリリースに合わせて、より聴衆に近い距離で演奏して反応を確かめたいこと、その他のソロ活動を充実させたいこと、さらに息子(ウィル・チャンプリン)の活動の応援もしたい、などということのようですが、それ以上の理由があるのかどうかはうかがい知れません。
ただ、以前から「シカゴとその他で、演奏の『熱さ』がまるで違う」などといわれていた通り、近年のシカゴでの活動に満足感を持っていなかったことを感じさせるような要素はありました。どうしてもその名声故に型にはまった活動を強いられる面があったシカゴでは、彼の思うような活動は出来ていなかったのでしょう。
現在アメリカではシカゴはアース・ウインド&ファイアとのジョイントツアー中ですが、既にビルはシカゴを離れ、今後のツアーには代役を立てるそうです。シカゴの方は、恐らくビルの後任に正式なメンバーを加えることはないような気がしますが、来月の日本公演までに何らかのはっきりした結論が出ていることを願います。
先月発売されたラスカル・フラッツの第6作目のアルバムを買ってきました。相変わらずアメリカ本国では売り上げ好調で、ビルボード誌の総合チャート第1位を獲得しているようですが、日本では前作「Still Feels Good」の売上が芳しくなかったのでしょう。今回は殆ど店頭でのプロモーションが見られませんでした。
内容については4作目の「Me And My Gang」からコンビを組むダン・ハフが今回もプロデュースしているということで、曲調やアレンジもその路線をそのまま踏襲している印象です。
相変わらずヴォーカル技量や楽曲の質は高く、安心して聴ける出来ではあります。が、今回は、いや前作からどうも違和感を感じるのです。アルバムの作り方があまりにも型にはまりすぎていて、「Me And My Gang」以降のどのアルバムから曲を聴いても、印象に差が全くないのです。
一般的に一流クラスのアーティストは、○○節といわれる特徴は常に持ちつつも、アルバムごとの作風というものがきちんと表れます。ところが、ラスカル・フラッツは3作目までとそれ以降でカントリー風味の強さに差があるという程度で、アルバムによる明確な作風というものが存在していません。実際に「UNSTOPPABLE」は確かにビルボード誌のNo.1を獲得していますが、首位の座は僅か1週で失っています。あまりにもパターンが定まりすぎていて、幾らワンパターンが通用するカントリーの世界であっても飽きられているのではないかという疑問を感じてしまいます。
彼らには間違いなく高い実力があるのですから、そろそろ違った方向性を見せて欲しいと、僅か一回聴いただけで思ってしまった作品です。個人的には、この路線は4作目の「Me And My Gang」が頂点だったと思っていますので、ベスト盤を除くどれか一枚のアルバムを選べといわれれば、やはり「Me And My Gang」を選んでしまうでしょう。ただ、これから聴いてみようと思う方であれば、この「UNSTOPPABLE」も間違いなく良作ではありますので、お薦めは出来ます。
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